大腸ポリープとは?
大腸ポリープは、大腸(結腸や直腸)の内壁から突出した成長物や腫瘍の一種です。大腸ポリープは良性のものが多いですが、一部のポリープはがんへと進展するリスクを持っています。 腺腫は、大腸上皮(腺管)が腫瘍性に増殖したもののうち良性のものを言い、大腸ポリープの約8割を占めます。大腸がんは、もともと大腸がんとして発生するもの(de novo)の他に、この腺腫を含む前がん病変(がんの前段階の病変)と言われる良性病変から進展するものがあり、数的には後者が多いとされています。
大腸ポリープの発見と早期治療は、大腸がんの予防に非常に重要です。小さなポリープは無症状で、発見されているポリープのほとんどが大腸内視鏡(大腸カメラ)検査で偶然に発見されています。 大腸がんになる可能性のあるポリープをより早期に発見するためには、症状がないうちでも大腸内視鏡(大腸カメラ)検査を中心としたがん検診を受けることが重要です。また、リスク因子に当てはまる場合や、推奨される年齢(40歳以上)に達した場合は、定期的な大腸がん検診や大腸内視鏡検査を受けることを考慮すべきです。
大腸ポリープのリスク因子は?
大腸ポリープの発生リスクを増加させる可能性のあるリスク因子は以下の通りです:
年齢
40歳以上の人は大腸ポリープのリスクが高まります。
家族歴
家族内で大腸ポリープや大腸がんの症例がある場合、リスクが増加する可能性があります。
遺伝性疾患
例えば、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)やLynch症候群などの遺伝的疾患は、大腸ポリープのリスクを増加させることが知られています。
以前のポリープや大腸がん
以前に大腸ポリープや大腸がんの診断を受けた人は、再びポリープが発生するリスクが高まります。
肥満
体重が増加すると、大腸ポリープのリスクも増加する可能性があります。
喫煙
タバコを長期間吸っている人は、大腸ポリープや大腸がんのリスクが高まることが示されています。
アルコールの過剰摂取
大量のアルコールを摂取することは、大腸ポリープのリスクを増加させる可能性があります。
食生活
高脂肪、低繊維の食事を摂取することは、大腸ポリープのリスクを増加させる可能性が示唆されています。
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を持つ人は、大腸がんのリスクが増加することが知られています。
タイプ2糖尿病
タイプ2糖尿病を持っている人は、大腸ポリープや大腸がんのリスクが増加する可能性があります。
これらのリスク因子があるからといって、必ずしも大腸ポリープが発生するわけではありません。しかし、リスク因子の1つまたは複数に該当する場合、定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることで、早期発見と予防が可能となります。医師との相談を通じて、適切なスクリーニングやフォローアップのスケジュールを決定することが重要です。
大腸ポリープの切除は
推奨されますか?
はい、大腸ポリープの切除は強く推奨されます。
理由は以下の通りです:
1. 将来の大腸がん予防
大腸ポリープの中には、**腺腫性ポリープ(腺腫)**と呼ばれる「がんの前段階」のものがあります。これらを早期に切除することで、大腸がんの発生リスクを大きく下げることができます。
2. ポリープは大きくなったり
悪性化する可能性がある
サイズが大きくなったり、形状が不整だったりすると、がん化のリスクが高くなるため、小さいうちに取るのが望ましいです。
3. 切除自体のリスクは比較的低い
通常のポリープ切除(ポリペクトミー)は内視鏡で行う日帰りの処置であり、出血や穿孔といった合併症の頻度は非常に低いです。ただし、リスクはゼロではないため、医師と相談のうえ判断します。
ポリープの種類や
サイズごとの切除基準は?
ポリープの種類と切除の目安
①腺腫性ポリープ(腺腫)
- 最もよく見られる良性ポリープ。将来的にがん化するリスクあり。
- 切除推奨の基準
サイズ 切除の方針 ~5mm 多くは経過観察。ただし形状や患者背景により切除。 6~9mm 原則として切除。 10mm以上 切除強く推奨(がん化リスク上昇)
②鋸歯状病変(SSA/P, TSAなど)
- 見た目は腺腫に似るが、右側結腸にできやすくがん化しやすいタイプ。
- すべて切除対象(サイズにかかわらず)。
③過形成性ポリープ
- がん化しにくい良性ポリープ。
- 5mm以下で直腸・S状結腸なら経過観察可。
- ただし、右側結腸にできたものや6mm以上のものは切除を検討。
④炎症性ポリープ、
リンパ濾胞性ポリープ
- がん化のリスクはほとんどなし。
- 通常は経過観察のみでOK。
形状や病理的特徴による
追加判断
特徴 | 対応 |
---|---|
不整形・広基性・表面不整などの 変化 |
がんの可能性あり →積極的に切除+病理検査 |
NBIで血管模様が不整(JNET分類) | JNET2B以上 →切除対象 |
切除方法の選択
(コールドポリペクトミー、EMRなど)は?
大腸ポリープの切除方法は、ポリープの大きさ・形・場所・悪性の疑いの有無などを総合的に判断して選ばれます。
以下に主な方法とその選択基準を整理します。
主な切除方法とその選択基準
①コールドポリペクトミー(CSP)
特徴
- 電流を流さず、スネアで物理的にポリープを切除。
対象
- 5~9mm程度までの良性腺腫
- 表面平滑、がんの疑いがないもの
利点
- 合併症(出血・穿孔)のリスクが低い
- 抗血栓薬内服中でも比較的安全に施行可能
②ホットポリペクトミー(HSP)
特徴
- スネアで電気を通して焼き切る方法
対象
- 6~10mm程度の腺腫
- 出血リスクより再発・取り残し防止を優先したい場合
注意点
- 出血や穿孔のリスクがCSPより高い
③内視鏡的粘膜切除術(EMR)
特徴
- 病変の下に生理食塩水などを注入して浮かせ、スネアで電気的に切除
対象
- 10~20mm程度の腺腫
- 表在がんの疑いがあるが、深達度が浅いと考えられるも
利点
- 広基性病変にも対応可能で、取り残しリスクも低い
まとめ:大まかな使い分け
病変サイズ | 切除法候補 | 備考 |
---|---|---|
~5mm | CSP | 安全性重視 |
6~9mm | CSPまたはHSP | 形状・出血リスクに応じて選択 |
10~20mm | EMR | がん疑いならESD検討 |
患者さんの基礎疾患(抗血栓薬の使用など)や、ポリープの位置(直腸・盲腸など)も選択に影響します。
各手技後の注意点や
術後フォローについては?
各切除法ごとに、術後の注意点やフォローアップの方針が少しずつ異なります。
以下に整理してご紹介します。
コールドポリペクトミー(CSP)
術後
注意点
- 出血リスクは低いが、まれに遅発性出血あり(1〜2日後)。
- 穿孔のリスクは極めて低いため、日常生活はほぼ通常通りでOK。
フォロー
- 通常は病理結果を後日外来で説明。
- 悪性所見がなければ、1〜3年後の大腸内視鏡で再検査。
ホットポリペクトミー(HSP)
術後
注意点
- 熱凝固による遅発性出血(2~7日後)がCSPよりやや多い。
- 穿孔リスクも若干高め。
- 術後1週間程度は激しい運動や飲酒、入浴を控える。
フォロー
- 同様に病理結果確認。
- 病変により、1〜3年以内の再内視鏡検査を計画。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
術後
注意点
- 切除範囲が広いため、出血・穿孔のリスクがやや高い。
- 絶食または消化の良い食事指導(術後1〜2日)。
- 入院管理を行う施設も多い(特に大きな病変や高リスク患者)。
フォロー
- 1〜2週間後に病理結果説明。
- 高リスク腺腫だった場合は半年〜1年以内の内視鏡再検査。